非常時の大奉仕

『主婦之友』昭和12年12月号 大きなサイズの画像を皇国画像庫にアップしました。

時局に鑑みて、絶対値上げせず!
今や我国は国民精神の総動員を実施して難局の打開に当つて居ります。この時こそ平素より合理的経営により他店の絶対追従を許さぬ弊店独特の寿料理こそ時宜に適したものと存じます。おめでたき御婚礼と云へども経費を節約せられまして名も縁起ゆかしいベビーボンド(少額公債)一枚でもお嫁様へ御もたせ下さればこれがなによりの愛国にもおむこ様にもよろこばれ一石二鳥とはこの事でございます。

 「非常時」と「大奉仕」という、一見つながらないコトバが見事に合体しているところに感服した。いわゆる「時節柄……」という“空気”に対するひとつの適応のしかた、なのかもしれない。
 これまでいろいろな古雑誌を見てきて、「国民精神の総動員」がうたわれる場合、上記の広告文のようなパターンが圧倒的に多かった。「非常時」――戦時下であることはわかっている、わかっちゃいるけど、結婚式はバッチリ決めたい。ここに公的時局認識と銃後の日常意識とが衝突するわけだが、この結婚式場屋さんは「経費を節約」とか「少額公債」とかの小道具をちりばめて、見事に時局迎合広告を作り出しているわけであります。アタマ使ってるなあ〜。