非常時向け国策料理本の表紙は兎肉のフライ


『非常時向の国策料理 和洋一菜料理の作方三百種』『主婦之友』昭和13年10月号別冊


昭和13年と言えば、「支那事変」の2年目。近衛内閣の「国民政府を対手とせず」声明が出たのがこの年の1月。この年の5月には国家総動員法が施行されました。
時局にあわせて「非常時の国策料理」と銘打たれてはいますが、その7年後の地獄絵図などまだ想像すらもしてなかった、のどかなお料理本であります。
で、これのどこが「非常時下」なのかというと、

銃後の国民の健康は、栄養に適った一菜料理から――私共が日々の献立を立てる場合には、まづ栄養、経済、時間の三つを第一に考へ、非常時対策として牛肉や豚肉代用の鯨肉や兎肉を美味しく調理し、安価で栄養価の多い魚を採り入れ、どんなに切り詰めても体力を落すことなどないやう工夫したいものです。
本書リードより。

……と、「牛肉や豚肉代用の鯨肉や兎肉」さらに「魚」をどう美味しく食べるかというところにあった。
で、驚くのは、一人前の肉の量が本書のレシピでは鯨肉・兎肉を問わず、平均すると20匁程度。
1匁は3.75グラムだから、一人75グラムの計算になっている。
ウチの夕食用に買いものするときは、お肉は一人前100〜200gぐらいの計算で「満足」だから、昔の人はその半分のお肉を楽しんでいたと思われる。
肉って、そんなに量を食べるものではなかったのですね。