こうの史代『この世界の片隅に』
夏目漱石の『猫』に「沈澱党」というアナクロニズムの残党が登場しますが、連休から今日まで自宅にこもって「沈澱党」を決め込んでおりました。
世評に違わず、これはヨカッタ。おすすめの作品です。なんといっても作中にあふれる広島弁が、ブラジル「勝ち組」だった我がトンデモ曾祖父を思いださせてくれます。決戦下の日常生活も、作者の想像力のおよぶかぎりきちんと再現しようとしているところが、たいへん好感がもてました。とくに戦時下での「自宅内での和装」のくだりとか。あと「国策炊き」と「楠公炊き」の違いとか。こうの版「愛国いろはカルタ」とか。……そんな「こまけぇこたあいい」んですが、なんといってもキャラが可憐で、ストーリーもかめばかむほど深い味わいが出てくる、“小さな”物語です。
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