「植えてはいけないケシ」のはずが……


婦人倶楽部 昭和17年2月号 92頁


国策協力のための「空き地利用の薬草栽培」のページに、思いっきり阿片の製造法が記載されていたので驚いた。
大麻ヒロポンも、大日本帝国では合法だったわけで驚くには当たらないが、「ヒマ」とならんで家庭での栽培が奨励されていたとは知らなかった。ヒロポンはとにかく、大麻については、日本独自のヘンプ・カルチャーが日本にもあったのに、GHQが無理矢理非合法化してしまった……という話を、アメリカ西海岸在住のオリジナルヒッピーの人から聞いたことがある。ぜひ来年の「新しい歴史教科書」……おっともう無くなるんだった……「新しい教育基本法に準拠した教科書」には、古来からの大麻・阿片活用法について書いて頂きたいものである。
で、肝心の栽培法だが――あくまでも歴史的資料としての見地から――全文を収録しよう。
執筆者は厚生省東京衛生試験場糟壁用薬用植物栽培試験場試験圃場長・若林栄四郎氏である。

罌粟(ケシ)の栽培法

罌粟から採る阿片は、重要な薬用の原料ですが、事変以来、民間も軍需も非常に増加し、しかも入手がだんだん困難になって来ましたので、政府では大いに力瘤を入れてゐるのです。種子は府県の衛生課に申込めば無料で頂けます。

――なんと、「官許」というだけでなく、お上が種子を配布していたとは!

これには春播きと秋播きがあって、土地は何れも肥えて排水がよく、風当たりの少ない陽当りのよい場所、それも住宅に近ければ申分ありません。平畦か麦畑のように畦を作って一筋に播き、秋蒔きは三回、春播きなら二回間引いて株間を四、五寸ほどあけ、除草は早めに手まめにし、肥料は堆厩肥、人糞尿、鶏糞、灰など、ほとんで何でも差し支えありません。

――ふむふむ……って、これはもうほとんど阿片畑の作り方ですね。

草丈が一尺五寸位になったら、一度土寄せをし、脇芽は全部早めに摘みとり、蕾は一株に一個だけ残します。花が終ってけしぼうずが出来たら、充実しなし時期を見て小刀で切傷をつけ、そこから出た汁を箆で掻きとり、茶碗に集めるのです。これを日干しにして乾かし、細かく砕いて缶にいれて貯蔵しますが、これがつまり阿片で、一畝歩から凡そ二百瓦(グラム)から二百五十瓦ほどとれます。

――一畝歩といえば約1アールほど。かなり本格的な阿片作りを厚生省は奨励している……。

値段はモルヒネの含有量によって違い、含有量一%のものが一キロ五円で、一%増すごとに五円増しということになっています。平均十一%は含んでいますから、一キロ五十五円位にはなります。

――阿片の買い取り相場まで親切に教えてくれている。

この他、罌粟の茎や葉は肥料や燃料になりますし、けしぼうずからは種子(ケシの実)が一畝で三升位(小売定価一升一円三十銭)は採れます。これは自家用にもなれば菓子などの材料として売れます。

――種子だって、精製すればかなりの値段のブツになるのに。

花は観賞用としても綺麗ですし、空地を利用してたとえ少しづつ作っても、全国では大した額になるのですから、大いに協力して国策に応えて頂きたいものです。

――大いに国策に応えたくなってきました。

*トラバをくれたid:muffdivingさんによると、ケシの種子からはアヘンは獲れないそうです。残念。