軍国のご愛用酒


栄養摂って、頑張れ、銃後!
軍国のご愛用酒――生ビールの様にナマのまま詰めた栄養・健康・比類なきうまさ

キンシ正宗 

東京日日新聞 第22729号、3面、昭和14年10月28日発行、東京、東京日日新聞発行所(大阪毎日新聞社東京支店)

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 火入れをしない生酒に「栄養・健康」の効能を謳っていたとは知らなかった。ホントに健康に関係あるの?
 当時の酒屋に冷蔵施設が完備していたとは到底思えないから、「防腐剤を入れてない」というのも気になる。日本酒の防腐剤というと当時はサリチル酸のはず。これを入れていないということは、合成清酒に相当アル添していたのか? どうやって流通に耐えうる生酒をつくっていたんだろうか。そもそも合成清酒に生酒なんてあるの?? 
 謎は深まるばかり――と思っていたら生酒ではなく「生詰」だった。ということは、現在のように生でビン詰めして、それから火入れをしていたのではないか**これは間違い。2回目の火入れをしないのが「生詰酒」なのだそうです。すでに月桂冠がはやくからその方式を導入していたようだし、たぶんこの「生詰」とはそういうことなのだろう。

ちなみに今もあるキンシ正宗株式会社の「あゆみ」によれば、

1937年 大阪陸軍糧秣支廠より軍用酒の指定を受け、以後引き続き終戦に至るまで年間最高一万五千石に及ぶ納入をする。特に勲章に因んだ「キンシ正宗」の銘柄が 当時の軍に歓迎された。
1943年 アルコール添加による醸造法が許容される。

とある。