短時間で驚くほど大量の握り飯ができる!


非常炊出しの握り飯器
▲炊出しする機会が追ひ追ひ多くなってまゐりますが、この握り器を使へば、熱い御飯で掌に火脹れを作る心配もなく、同じ大きさの握り飯が一分間に十箇は確実に作れます。
▲作り方=図は竹筒に木の丸棒を挿し込んだものですが、大小の竹、茶筒、空罐などを利用してもよい。握り飯の厚みを約一寸五分として、その寸法だけ竹筒の中ほどを図にように刳り抜き、丸棒を入れてそでが刳抜きの寸法だけ上下するやうに釘で止めます。
▲使ひ方=中の棒を引き上げた竹筒を鹽水に浸しては御飯の中へぐつと突込み、棒を押し下げると握り飯が押し出されます。御飯を沢山詰めるほど固くできます。(木村光子氏)

引用元=『主婦之友』昭和20年4月号


これは「握って」いないので型押ごはんとでも呼ぶべきものでありましょうか。冒頭にある「炊出しする機会が追ひ追ひ多くなってまゐりますが」というきわめて控えめな非常時局の表現が、なかなかに奥ゆかしく、感無量であります。

アイディアとしては、まあそうね……程度の決戦ライフハックではありますが、御飯にこの筒を突っ込む前に「竹筒を鹽水(=塩水)に浸し」というところに工夫が感じられます。「御飯を沢山詰めるほど固くできます」という最後の一文も、昭和20年4月という掲載月を考えるとそんなに御飯など一般庶民に出回っていたはずもなく、「もしも御飯をたくさん詰めるならば……」という悲しい仮定法に泣けてきます。