僕らは昭和の少国民だ

北原白秋大東亜戦争 少国民詩集』(朝日新聞社昭和17年


写真は、本書の巻頭にある詩「僕らは昭和の少国民だ」の冒頭です。挿絵の坊主少年は、『弥次喜多inDEEP』に出てくる千年ムスコかと。

僕らは昭和の少国民


僕らは昭和の少国民だ。
見ろ見ろ、時代の少国民を。
太陽――僕らの日章旗
打ち振り打ち振り行進、進め。

ああ、見ろ偉大な東亜の今を。
空だ、青空、アジヤの空だ。
陸だ、大陸、アジヤの陸だ。
海だ、大洋、アジヤの海だ。

清明――僕らは正気に生きる。
忠誠――僕らは天地に誓ふ。
雄大――僕らは四方を望む。
崇高――僕らは祖国に殉ずる。

質実――僕らは簡素を忍ぶ。
剛健――僕らは力を養ふ。
堅忍――僕らは苦難に堪へる。
錬成――僕らは鍛へて克つのだ。

僕らは継ぐのだ、肇国精神。
僕らは承けてる、祖先の血統。
僕らは見て来た、興隆日本。
躍進、躍進、躍進しよう。

僕らは飛び立つ翼を張つて、
僕らは見つめる、羅針と星を。
僕らは闘ふ、戦車で、銃で、
潜航、爆撃、突進する。

僕らは学ばう、日本国史
国語だ、科学だ、――僕らは育つ。
僕らは神話を創造する。
僕らは栄と光を思ふ。

僕らは文化の使節となる、
僕らは資源を開発する。
僕らは福祉を増進せしめる。
僕らは理想を実現する。

僕らは昭和の少国民だ。
見ろ見ろ、時代の少国民を。
鍛へろ鍛へろ、鋼の意志に、
ひらけよ桜と、純なる感情。

最近の右翼の人には、こうゆう朗らかな狂気が欠けている。
とくに、

僕らは継ぐのだ、肇国精神。
僕らは承けてる、祖先の血統。
僕らは見て来た、興隆日本。
躍進、躍進、躍進しよう。

……みたいな、モダニズム的「躍進」の気性がないよね。