矢口高雄先生の『蛍雪時代』はすごい!

痔主粉砕労農連帯さまに紹介してもらった『蛍雪時代―ボクの中学生日記 』全5巻が夕方届き、むさぼるように読了。激しく感動した。
・戦後直後の秋田の農村の日常的な労働をきっちり描いているところが、なによりもイイ。稲作文化とは無縁なところで育ったので、「苗代」とか「代掻き」とか、ひとつひとつが新鮮で、「結(ゆい)」というのがようやく理解できた。田植えをする前にきっちり碁盤の目を田んぼに画くところとか、驚いた。
・中学校時代のあまたのエピソードには、小泉先生と校長先生のキャラクターがなによりもギラギラとしていて魅力的。こんなに熱い先生がいたんだ! つーか「民主教育」が光り輝いていた時代だからこそ、あり得た「学校」なのかも。生徒たちの「意見」や「自主性」は、上記の農業労働に裏打ちされた足腰のしっかりしたものなところが驚き。〈子ども〉じゃないんだな。〈民主日本の若い農民〉なんだな、感性が。
・この作品全体に流れているのが「母の汗」。お母さんは農家の嫁として、すさまじい労働をこなしている。そのことを矢口少年はちゃんとわかっている。この働く人を見る目こそが、この作品を輝かせている。ラストの「母の汗の甘いにおいを感じながら」とか、これはちょっと涙目になりました。
・銀行の労働組合の切り崩しの話とか、いろいろおおと思ったところはありますが、凡庸になるのでここまで。1993年の作品だったのですね、もっと早く読むべきであった。
・やっぱり日本は「神の国」なんかにしちゃダメだわ。働く者の「島」なんだなあと強く思った。働く者のいないところなんて世界中ないのだから、別にこれが普通の人間の営みなんだよな。

で、ワタクシはamazonで買ったのだが、けっこう高かった。
東京都内で調べてみると、けっこう公共図書館にも置いてある。都内だと――

板橋区立図書館
練馬区立図書館
文京区立図書館
足立区立図書館
町田市立図書館
武蔵野市立図書館
中央区立図書館
福生市立図書館

――に全館揃っておいてあるみたいです。お近くの図書館のOPACでも調べてみてはいかが。