『天皇の秘教』たいへん面白し

天皇の秘教

天皇の秘教

かなり分厚い本なので躊躇したが、思い切って買ってよかった。著者の藤巻氏は学研のコレ系のムックでよく見る方で、『宇内混同秘策』を知ったのもこの人の記事が最初だった。古神道復古神道系の資料を探すときの参考書にしております。
で、本書は明治維新前後〜大正を中心に、近代天皇制の〈宗教的〉成立を描いたもの。ですから、基本的にトンデモ天皇教の歴史が一望できる仕組み。

目次

第1章 天皇教の創造(復活する皇祖神 廃仏毀釈 天皇を中心とした神聖国家説)
第2章 天皇神学の成立(芳村正秉と巫部経彦の秘伝復興 一霊四魂と鎮魂帰神
     川面霊学と天皇霊の秘儀 田中智学と天皇転輪聖王論 護国の曼荼羅天皇本尊論)
第3章 天皇信仰と反天皇神話(天皇は本当に崇敬されていたか 異形の創世神話天皇唐人説
     厳・瑞の御魂と天津日嗣天皇
終章 「天皇の秘教」が意味するもの

いま第2章まで読んだところですが、廃仏毀釈運動のモノスゴさや、これに対抗して仏教側が「皇道仏教」の創造をたくらんで神本仏迹説をとなえたこととか、川面凡児の禊体系とか、かゆいところに手が届く詳述が楽しい。「現人神」概念に盛り込まれたすさまじい妄念が活写されていて、かなりたじろぎました。
筆者のスタンスは客観的で、「解説」に終始していてなかなか好感がもてます。次には「大正〜昭和」編も予定されているとのことで楽しみであります。あんまり話題になってない本みたいだけど、これは買いでしょう。高いから図書館にリクエストするのもいいかもです。