抑留されたファシスト少女フランチェスカちゃん


伊国公館員並伊国人抑留者名簿(冒頭部分)『特高外事月報』昭和18年10月号

 やはりフランチェスカちゃんは、父君のグイド・ベルトーニ駐在武官やご家族とともに、田園調布の聖フランシスコ修道院に抑留されていました。
あらためて家族構成を見ると、

ギイド・ベルトニー(父)49歳 陸軍武官
エナー・ベルトニー(母)47歳
カルロー・ベルトニー(長男)9歳
フランチェスコ・ベルトニー(長女)14歳
 *人名表記は外事月報に拠る

 フランチェスカちゃんは、お姉さんだったわけですね。昭和18年(1943年)に14歳ですから、生まれは昭和4年(1929年)、もしもご存命であれば今年で83歳。先日亡くなった長門裕之さんよりも年上だったのです。ああ14歳……

 ところでご一家の住所は「麻布区箪笥町六七」になっています。当時の地図と見比べると、現在の営団地下鉄南北線六本木一丁目駅周辺、アークヒルズとかが立っているあたりのようです。同番地には江戸川乱歩の『影男』で名前が使われている「張ホテル」がありました。たぶんベルトーニ一家はこの張ホテルに住んでいたのだと思われます。実際、現地に足を運んで見ましたが、すっげー背が高いビルが並んでいるばかりで、往時をしのぶものは何一つありませんでした。

 さてこうなると、フランチェスカちゃんの戦後が気になります。田園調布の聖フランチェスコ会修道院には、抑留イタリア人のその後を知る人がいるかもしれませんし、『敵国人抑留』著者の小宮まゆみさんに聞くのも一つの手でしょう。14歳の可憐なファシスト少女の行方がとにかく気になる、という後ろめたい調査の口実をどう弥縫するか悪知恵を働かせねばなりません。