戦時下の月経帯


『少女倶楽部』昭和16年8月号広告

女学生の勤労動員について調べていて、ふと目についたのが生理用品の広告群だ。
「月経帯」というのはT字帯風ふんどし系のものだと思っていたが、太田春龍堂謹製「シーズン月経帯」の広告には「ズロース兼用」とあったので、ちょいと形状が気になる。……気になるが、人類の未来にとってはどうでもいいことであろう。

銃後のつとめ健康第一
これさへあれば絶対安全

……と、さらりと「銃後の月経」を意識させるコピーは秀逸だが、わざわざ「銃後」を持ち出すのはミエミエの時局迎合であります。



『少女倶楽部』昭和16年8月号広告

この月経帯戦線には、かの大妻タカコ女史も参戦していたようで、「苦心三ヶ年」の研究を重ね、「フレンドズロース月経帯(バンド)」なる商品を開発している。これまたズロースタイプですね。

本品は新裁断法によつてどなた様にもピツタリと気持ちよくご使用出来る構造になつて居りまして、在来の不備を一掃し完全にズロース兼用の特徴を備へその爽快な使用感は他品と全く比較になりません。

これまた気になる売り文句で、ぜひともその「新裁断法」を確かめたいところであります。



『少女倶楽部』昭和17年3月号広告

通学に防空に教練に
これさへあれば安心

当時の女学生にとって生活上注意を要するシーンは、「通学に防空に教練」だったことがうかがえます。それにしても、「メトロン」ってどういう意味なのでしょうか?
メトロンバンド」でググってみると、驚愕の掲示板を見つけました。

1068: 名前:メトロン 投稿日:2006/12/17(日) 22:42
昔の生理バンドの入手方法をだれか教えて下さいなにか名案ありませんか

1069: 名前:"佳奈" 投稿日:2006/12/17(日) 23:07
 こん○○は。佳奈です。
 メトロンさん、はじめまして。
 昔の生理バンドというのは、替えゴムタイプのものでしょうか、ネットタイプのものでしょうか。
 替えゴム式のものは、生ゴムの耐久年数を考えると、本当のものはないと思われます。ですから、よしこちゃんのおっしゃるように検索してみると、横浜の懐古堂さんなどの復刻品が販売されています。
 ネットタイプのものは、田舎の衣料品店や薬局(ドラッグストアはダメ)を根気強く探すしかないと思います。もしかすると100軒聞いてもないかも知れません。1000軒調べる意気込みでやってみると、もしかするとあるかも知れません。
 では、では、バイバイ (^o^)/~~~

1070: 名前:名無しさん@下着大好き! 投稿日:2006/12/18(月) 21:54
フォォ〜!!!!!

1071: 名前:メトロン 投稿日:2006/12/21(木) 01:54
KANA さんありがとう♪メトロンバンド月経帯というのを新品箱入りでもっています。さらに欲しいと思いみなさんにおききしました。

http://yyuu.jp/_bbs/mibbs.cgi?mo=p&fo=zenpan&tn=0036&rs=1051&re=1080&rf=no

いやあ、想像だにしなかった「レトロ生理用品マニア」の世界が広がっていてたまげた。メトロンバンド月経帯というのを新品箱入りでもって」いるからハンドルがメトロンなのかっ! 田舎の衣料品店や薬局を1000軒回る意気込みで昔の生理用品を探し回るマニアさんの努力には、土下座級の感銘を受けました。そういえば、神保町の古書展で、「さんぽん」未使用品一袋300円、というのが出ていて、一回りして残っていたら買ってみるかと思ってたら、瞬時に売れていたことがありました。こういう変態道があったとは、変態の道はナンと奥が深いのでありましょうか。
実際に収集品をアップしている大先生もいらっしゃって、生理用品――しかもアンティークものの生理用品のマニアの方のブログでは、たいへんに勉強になりました(苦笑)。

いろいろな変態さんに尊敬を払ってきたつもりの俺でありますが、これは嗜好的にちょっと限界だわ。


追記(1):フレンズ月経帯については、下記の記事が上掲のブログにあったので引用します。

「奥様、ありましたよ。これなら、女学生用にピッタリですよ」
 ケースの上に置いた小箱は、私にも見覚えのある製品ばかりでした。
 フレンド月経帯と書かれた小箱を女主人が開け、中から黒いズロースを出して下さった時、私は思わず声をたてたいほどのショックに見舞われました。
 その生理バンドは、写真左のようにふっくらとした黒のズロース型で、そのうえ、今では手にすることもできないと思っていた前開きの物だったのです。
 次に出されたのが、写真右にあるような、タップリと黄色いゴムが張られた、やはり前開きのズロース型バンドで、これはコメット月経帯と書かれていましたが、そのブランドには記憶はありませんでした。
 でも、二枚の黒いズロース型月経帯はどちらも替えゴムは昔ながらの黄色い生ゴムで、私の女学生時代のものとほとんど変わらなかったのです。
「私たちの時代には、みんなこのズロースをはいたものでしたわ。いかがですか、奥様、やはり女学生時代はこれと同じようなものをお使いでしょう」
 私は二枚のズロース型月経帯を手にしながら、同性の気やすさから
「そうでしたわね、なつかしいわ」
と、答えました。

SMファンタジア75年5月号
http://blog.livedoor.jp/dannamurakami/archives/784440.html

追記(2):たぶん「戦争と月経」というテーマでは、もっとも参考になる本ではないか、と。

女と戦争 (第17巻) (近代女性文献資料叢書 (17))

女と戦争 (第17巻) (近代女性文献資料叢書 (17))