臭いものには糞蠅たかる――『言論ギャング 野依秀市の正体』がすごい

かの『米本土爆撃』で有名な野依秀市を攻撃するブラックな本だが、国立国会図書館デジタルアーカイブで公開されていたのでついつい読みふけってしまった。1933年に出版されたこの本、目次を見るだけでもエゲツナイ感がすごい。

野依秀市罪惡の全貌
穴水要七未亡人を喰ふ
女王の前に出た奴隷の態度
宗教の假面に犯される彼の色情生活
毒牙にかかり人妻自殺を企つ
女秘書と女事務員を募集する魂瞻
待合で女事務員に横面を毆らる
毒牙に虐まれて男を呪ふ
淫蕩に汚される眞宗會館
恐怖に震ふ女を暴力で征服
關屋敏子に赤恥をかく
姙娠した女性を悲劇のドン底へ
バツカス女將と痴話狂ひ
東京瓦斯疑獄に踊る彼れ
臭いもの一手引受け
東京瓦斯疑獄辯護の裏
岡本櫻の東京瓦斯乘取り
金穴を狙ひ瓦斯から明糖へ
逆手を使つた明糖會社の裏の裏
明糖事件の眞相の出版
檢察當局を愚弄した明糖辯護
明糖擁護と彼れの思惑
三百代言の減らず口
言論を冐涜して天下公衆を欺く
世間は斯く笑ふ
野間清治氏攻撃の魂膽
嫌がらせは恐喝の豫備行爲
野間氏攻撃のそもそもの發端
野間氏に二萬圓ねだる
嚴正批判も呆れる下劣な心情
死んだ骨までしやぶる
部下社員から猅々親爺扱ひ
女を傷つけ金を絞り佛心とは
廣告料でも貰へばぺコぺコ
彼れの説法屁一つに價せず
インチキを擔ぐものは誰れ?
帝都日日新聞の假面を剥ぐ
帝日は共産黨の機關紙
待合政治を非難する野依が待合で
先づ自分の野蠻に顧りみよ
惡徳通信とインチキ雜誌
横斷飛行攻撃のうら
金欲しさからの常套手段
國家的不幸に冷酷無情
「どりこの」に對する營業妨害
明治生命攻撃に野間氏を捲添へ
人を傷つけることの愚を悟れ
血迷ひ過ぎた人身攻撃
野間氏の保險稼ぎは捏造
彼れの惡辣横行ぶり
臭いものには糞蠅たかる
眞綿で首を締められた森永製菓
高橋博士哀れ死の道へ
實業家が恐れる實業通信
手切金の上前はね
郷男爵も赤蠅には辟易
絞り上げられた華族
某公爵色戀さたで一と仕事
某伯爵の色狂ひでも稼ぐ
松竹キネマ廣告強要の失敗
待合「中川」攻撃と彼れの腹
野依秀市の不逞を撃つ
天下一の惡徳新聞帝都日日を葬れ
附録
羊頭狗肉の『軍部を衝く』

*本文は http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1080255

刊行は「夕刊帝國新聞社」。検索すると佐藤卓己柏書房のWebサイトでの連載でちょろっと触れている。

拙稿で取り上げた日本主義新聞人・高杉京演の足跡も、昨年復刻した『新聞と社会』(連載 第39回参照)以外ではほとんど追うことができない。高杉が編集発行した『帝国新報』『夕刊帝国』『帝国今夕新聞』『東亜日日新聞』『皇国日本新聞』などの所蔵先もほとんど確認できなかった。
http://www.kashiwashobo.co.jp/new_web/column/rensai/r01-52.html

いずれにせよ、「夕刊帝國」もまた野依と同じく糞蠅仲間であったと思われる。野依にたたかれていた大日本雄弁会講談社野間清治の肩を持っているから、なんとなく文闘の背後関係は想像できるのだが、本当のところはわからない。今となってはどうでもよいことであるが。