『出ニッポン記』に号泣

上野英信著『出ニッポン記』(潮出版社、1977年)を早稲田の古書現世で購入。526頁の大著だが、一気に読んだ。60年代に、筑豊の炭鉱を追われた坑夫たちがブラジルに移民。石川達三『蒼氓』を上回る苦難の中で、ブラジルに根付き、生きてゆく――その姿をルポしたすさまじい傑作だ。これは魂を揺さぶられる本だ。曾祖父の世代の辛苦はなんとなく「聞いて」はいた。しかし戦後もこんなことがあったとは……。まさに「棄民」以外の何だろうか。ニューカマーの人達に対して「あの人は川筋もんだから」というさげすむような言葉を祖父や父親が投げたことを思い出した。やっとその意味がわかったよ。これは復刊されるべき本だ。

日系の ともたちよ、にっぽんごを おぼえて このほんを よもう。ブラジル日系しゃかいで みんなが はなしをしなかった れきし が、このほんに かいてあるよ。