はてなに引っ越します

ながらくご愛顧いただきました Doblog版「虚構の皇国blog」ですが、
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早川タダノリ拝


「翼賛科学」濱名竹次郎著 翼賛科学研究所刊 昭和16年6月


著者の濱名竹次郎先生は、東京で丁稚奉公をしながら立身出世のためには何と言っても発明が肝要だと考え、日夜頭を悩ませていたが、ある日自転車のパンク直しを見て、「之が水に浸つたり、日向に置けば直ちに剥脱して仕舞」うことに気づき、研究を開始した。

「ゴムは赤道下強い光と強い熱に恵まれて生まれたものであります故に之が日光に滅びると云ふ事は自然の上より見まして実に不可解にして当を得ざる疑問の点であります。あたかも印度人が日向で生活できないのと同じ理由(!)になるのであります」

――と考えた濱名先生、普通ならゴムとゴムノリの研究に向かうのだが、いきなり万物の細胞がいかなるマテリアによって成り立っているのかの研究に邁進した(ま、そこが狂っているのだけれど)。
そこでひらめいたのが「電気」であった。

地之巻 ――如來とは電氣科學であリます

「諸君もご承知の通り如何なる佛像も釈迦に関する限り一様に蓮の花の上に坐して居る事を御知りでありませう。そしてその上に坐して居るのは蓮の花も人間も萬象は一体であることを知らして居るのであります。之れを明治四十四年に発見したのが図解の蓮の実であります。中央が調和して二つの輪を作って居りその和より八方ヘアンテナを帳り廻ぐらしてあります一体之れは何んであるか今日では之れを見ればアンテナであることを知りますが其の当時では到底アンテナとして知る事は出來なかつたのであります。

其の後私は或る日海軍省内にあります無線電信塔に目をつけました、それと此の蓮の花の不可解とを睨合せて若し之れが電氣を受けて此の蓮全体が創造されるとしたならばその他のものも皆之れでなくてはならない筈であります故に花と花粉の関係を検べ又花と蝶との関係を検べました、然るに花粉は太陽の光を吸収してゐるものである事を発見しました。然れ共学説に依りますと花粉が雌蕊に附着して果実を得るものとして有ります、而るに之に反し、花粉の働きを受けない植物が多々あるのであります、栗の如くまた玉蜀黍や落花生の如く花粉と結實とは何等關係もないのです故に之れを研究して見ますと玉蜀黍や栗の如きは一見してとなたにも判る様に大なる受電細胞を外部に持て居るのであります。之れ栗の毬、玉蜀黍の毛であります。その他のもの検べると、葉の先端や茎等に皆受電細胞を持つてゐるのであります、人間の毛も皆受電のはたらきをして居ります、之れに依って電氣を受けるものである事は大体認識されたのでありますが、花と蝶ごはどういう関係を持つてゐるかと研究した結果図解の如く此の菜及び花には受電細胞が不完全でありまして、為に蝶がそこに働いて自己の持て居る蝶輪と申します通称羽に付いてゐる粉、此の粉は顕微鏡で見ますと皆一枚一枚鶏の羽と同じ型の羽であります。之を雌蕊の先端に附着させて蝶は自ら花の生理を助け又蝶は其花から出る蜜を吸つて自己も生存して共に相扶くる世界を作つてゐるのでありまして花は此の羽の先端から完全に電氣を摂り入れます。他に又小蜘蛛も蝶や蓮の花ご同じ様に枝から枝へと網を張つて之れで空中の電氣をとり入れて花を助け又己も助かつてゐるのであります。植物は電氣によつて創造されるものと言ふ事は概略断定が出來たのであります。

此の現実によつて人類を見ますとそれは万余の精虫の中のその一つが人間になるご言ふ事は實に不可解な事になります、やはり之れも電氣を吸収しなければ人間も生れないと言ふ事を考へました、仍て今回は鶏の生理より卵、卵より雛に至る進化を研究致しました。

之れに依て果せる哉予想通り雄鶏の精虫は蝶輪と同じ型の十数枚から成る羽である事が発見されたのであります。茲に於きまして全く動物も植物も皆電氣の働きによりまして造化される事が発見されたのであります、卵が艀化する時目方が殖えてゐるのは此の電氣に依て外部からマグネシウム瓦斯体を吸収して骨格を作つた為であります人類のは精轟に非ずして万余から成る毛根子である事が認定されたのであります。而れば電氣とは何処から生れてどんな形になつて来たものであるか又之れを検べなければならなくなつたのであります。」
(「翼賛科学」14頁〜18頁)


「宇宙の原理は只相対総力電気に依る和の一点に帰着してしまふのであります。一分子の和の力も国体の和も創造を持ってする扶翼の精神でありまして扶翼とは与える事であります為に滅せず。」――が著者・濱名竹次郎先生の結論である。



このパンフレットを神保町の古本屋のワゴンで偶然見つけたのだが、神道天行居(!)の幻のパンフレット「天意と現下の大戦」、昭和神聖会の雑誌「昭和」などがゴミのようにひとかたまりで並んでいた。前の持ち主は、戦前の古神道-疑似科学ネットワークにイカレていたのだろうか?

合掌。