「精神分裂病における妄想主題の時代的変遷について」藤森英之

精神神経学雑誌 第80巻12号 を落掌。
明治から昭和にかけての巣鴨病院・松沢病院のカルテから、誇大妄想の症例を集め、その妄想主題を統計的に整理した大変興味深い論文。
紹介されている憑依症例に、

至誠は何を意味するか。至は一、ム、土と書く。一は地平線であり、地の印。ムは屋根の形、その中心に至誠が存在する。即ち土から出て土に還る。人間は誰しも結局すべて土に還る。

霊は零(れい)である。ゼロだ。霊は死生(至誠?)がない。だから日本3000年の君主国は朝日の日の丸だ。僕はこの日本精神、皇道精神、君国のために自分の躬を調べているのだ……」(男、29歳、官吏(鉄道省勤務)、昭和9年入院)

というのがあり、戦時下の神道ナショナリスト超国家主義オカルティストの言霊言説とそっくりなことに驚く。

「軍国に咲く花」


海軍政務次官一宮房治郎氏令嬢 芳子様
颯爽と短く刈り上げられたお髪、伸び伸びと豊かに均整のとれた肢体、きびきびと歯切れのよい話し振り。すべてが軍国調のお洋服としっくり調和した、明朗そのものの芳子様は、つい先頃、米内海相代理として、皇軍慰問の旅より御帰京になったお父様の、それこそ眼に入れてもという末のお嬢様。
東京女高師附属高女をご卒業後は、YWCAで洋裁を御勉強中。スポーツならなんでもお好き、特に水泳なら負けませんよと、美しくお笑いになる。
「主婦之友」昭和12年12月号

――この「軍国に咲く花」コーナーは、華族・政財界トップのお嬢様たちのお見合い写真&ご紹介欄で、いまでいうところのセレブなおねえさまがずらり。中でも芳子嬢は一番の「美人」。こういう顔の人は最近いなくなりましたねえ。
こんな美人に担当記者氏もメロメロで、「伸び伸びと豊かに均整のとれた肢体」なんて、余計な劣情を燃やしている。