読書

長崎浩に『共同体の救済と病理』なんて今さら言われたくない!

・朝日新聞8月21日書評 姜尚中が長崎浩著『共同体の救済と病理』(作品社)について書評を書いている。見出しに「革命への熱狂が生む逆ユートピアの悲惨」なんて文字が踊っていて、思わずそそられてしまうが、書評を読む限り中身はきわめて残念な本。「オウ…

『赤紙と徴兵』ほか

日本経済新聞:書評ではないが、新刊おしらせ欄にでていた吉田俊浩著『赤紙と徴兵』が面白そうだったので注文。amazonで見ると、なかなかそそられる装丁で良いですね。赤紙と徴兵: 105歳最後の兵事係の証言から作者: 吉田敏浩出版社/メーカー: 彩流社発売日:…

タモ神閣下の『ほんとうは強い日本』ほか

日本経済新聞: ・3面の半五段広告にタモ神閣下の『ほんとうは強い日本』(PHP刊)の広告に爆笑。 私の知り合いで、来年定年を迎える東京電力の社員がいる。彼はかつて原発の現場で仕事をしていたが、今回の原発対応で再び原発の事故現場にとびこむことにな…

 激怒している小ブルジョア大衆――山口定『ファシズム』

有斐閣のベストセラーだった本書も、アホな版元が版権を手放したらしく、岩波現代文庫から出ていた(ことに一昨日気付いた)。 最近の「格差社会」論のカテゴリーに、どうして階級脱落(デクラッセ)が見あたらないのか不思議でならない……小生が知らないだけ…

 戦争の責任はルーズベルトにあり

『独逸対米宣言 戦争の責任はルーズベルトにあり』独逸研究所編 新東亜協会発行 昭和17年1月対米宣戦布告直後の、ヒトラーによドイツ国会での演説を集めたパンフレット。「開戦の責任はルーズベルトにあり」とヒトラーが絶叫するのは、まあお約束だろう。ヒ…

 トヨタ研究の伊原亮司氏が面白い

年度末で、ブログも書けないほどこき使われておりました。もうモニタがよく見えないくらい目が疲れており、ホントは本を読んでいるどころではないのですが、本をサカナに酒を呑んでいるうちに、面白い書き手を見つけた!「現代思想」7月号に、岐阜大学の伊…

 『天皇信仰道』加藤一夫著

昭和18年12月刊アナーキストから天皇信仰に転向した加藤一夫の珍本を入手。 「天皇さまが神であらせられる理由」など、かなり香ばしい本。 天皇さまが神であられる理由は、先づ第一に天皇さまと呉一体である 天照大御神が神であらせらるるからである。天照大…

 日本イデオロギー批判の先駆

戸坂潤『日本イデオロギー論』(白揚社版 昭和10年) すでに岩波文庫版で持っているのに、おまけに選集版でも持っているのに、なぜか買ってしまった白揚社版……。入手したのは昭和13年の11刷(!)で、あの時代でもかなり売れたのだな〜と感慨深い。紙型がす…

「人間完成」昭和13年10月号 純真社刊

発行人は岡本利吉。人工言語「ボアーボム」を考案したややトンデモ系人物だとだけ覚えていたので、古書店のワゴンで即買いしたのだが、帰って調べてみると、日本の消費組合運動の草分けの一人と知って驚愕した。(協同組合人物略伝)岡本先生のご高説は、実…

 これぞ決戦旅行体制!

『旅』昭和18年6月号 東亜交通社表紙には大きく「旅行指導雑誌」と刷り込まれている。この飽くなき指導精神にやや萌え。つーか、大きなお世話。誇り高き大日本帝国臣民の公共マナーの未開ぶりを示しているのがこの記事。 これぞ決戦旅行体制 五月から静岡で…

 もろに「ファッショ」な雑誌

昭和14年5月号 発行:イタリア社 発売:世界創造社「君が代連盟」につづく、すげえモロな雑誌名。 国会図書館にも入っていないらしいので、なかなかお目にかかれない1冊。 発行の「イタリア社」というのは、まったくのナゾ。発売の「世界創造社」は、「戦…

 『日本人の偉さの研究』 中山忠直著 章華社版 昭和8年

中山忠直といえば、戦前SFの極北、SF詩『地球を弔う』で有名だが、彼の漢方研究や日猶同祖論の影に隠れたトンデモ本である本書を、まさか手に入れられるとは思っても見なかった。もうタイトルだけでおなかいっぱいである。で、今回の新発見は、最後の甲…

 『仏教の新体制』山邊習学著 第一書房(戦時体制版) 昭和16年

仏教界と神祇院の間に起こった、靖国神社をめぐる抗争の一端が伺えるのが面白い。 十靖國神社の一宗教性に関してイ 神社崇拝と佛教思想 神社崇拝と仏教思想との関係に就て、特に仏教繁昌の所で今日新しく問題になつて居るのは、靖国神社に祀られた人達の魂の…

「精神分裂病における妄想主題の時代的変遷について」藤森英之

精神神経学雑誌 第80巻12号 を落掌。 明治から昭和にかけての巣鴨病院・松沢病院のカルテから、誇大妄想の症例を集め、その妄想主題を統計的に整理した大変興味深い論文。 紹介されている憑依症例に、 至誠は何を意味するか。至は一、ム、土と書く。一は地平…