ガセネタV3号

神国日本の友邦、ナチス独逸の最終決戦兵器・V3号は、なんと冷凍爆弾であったという新たな事実が判明した。

友邦ドイツのV三號

 ドイツの新兵器V三號は一体どんなものであらうか。その正体については交戦国をはじめ、世界のあらゆる国において、どんなものであらうとか、あんなものであらうとか、いろいろうはさがとび、敵がはに、恐怖と不安をあたへつづけてゐました。ところが、外電によれば、そのV三號が本年のはじめから、西部戦線に使用されてゐるとのことです。そして第一回の攻撃では、三発のV三號が、ベルギーのブルージュにあつたカナダ第一軍陣地の後方に落下して、半径一五〇メートル以内の人畜をたちまち凍らせてしまひ、また草や木までその生命をうばはれて、枯れはててしまつたといふのです。
 これには敵もすつかり胆をつぶしたり、冷したとのことですが、この冷凍爆弾については、ずつとまへ、ドイツの放送が『ドイツ軍新兵器実験の結果、ドーヴア海峡に、突如として氷山があらはれ、航行中の英国船をこまらせた』と報じましたが、右の外電が事実であるとすれば、さて一体どのくらゐ、この新兵器が使用されてゐるものか、知りたいものです。
 直径三〇〇米の円内には、生きものの存在をゆるさないといふのですからこれが、砲弾のやうに大量に使はれだしたら、それこそドイツ製英米人の冷凍ものが何十万とできることでせう。

「海と船」昭和20年2月号、日本海事振興会

 同様の記事が、「科学朝日」昭和20年2月1日号にも掲載されているらしい。
 「半径一五〇メートル以内の人畜をたちまち凍らせて」しまうとは、すさまじい威力である。まさにナチス科学力の結晶、本当に驚いた。
 何のために「冷凍」力を爆弾に搭載しようと思いついたのか。普通に爆発力を上げたほうが、凍らせるよりも簡単なのではないか。おまけに、兵器はいった凍っても、氷が溶ければまた使えるようになってしまうのだから、破壊力という点では劣る。かなり酔狂な発明としか思えない。
 それにしても最大の不思議は冷凍爆弾のしくみ。博士、教えてください!