「家庭基盤の充実に関する対策要綱」の資料について

WEZZYに下記の記事を寄稿しました。

「選択的夫婦別姓」を阻むネオリベ政策 自民党は「家族」になにを押し付けようとしているのか

wezz-y.com

上記記事では参照すべき資料類については最低限のものしか挙げられていないので、追記として少し補足します。

(1)「家庭基盤の充実に関する対策要綱」が読みたい

・政策研究会家庭基盤充実研究グループ編『家庭基盤充実のための提言』(大蔵省印刷局、1980年)は、要綱を執筆したグループがまとめたもので、これが基本的な資料になりますが、所蔵している図書館は少なく、入手はやや困難です。

iss.ndl.go.jp

・雑誌『国民教育』1980年5月号に転載されています。これは図書館に比較的所蔵されているとおもいます

iss.ndl.go.jp

・パンフレット『優生保護法改悪とたたかうために』(82優生保護法改悪阻止連絡会、1982年)に抜粋が掲載されています。このパンフレットは優生保護法改悪に向けた右派の運動の分析も含めて大変有用な資料です。入手はこちらのサイトを御覧ください。

www.soshiren.org

 

(2)「家庭基盤の充実に関する対策要綱」を書いた人はだれ?

高橋史朗「会長、高橋史朗の近況報告」(一般財団法人親学推進協会メールマガジン第122号、2020年4月13日発行)に、次のように紹介されています。

 一般財団法人親学推進協会を設立して節目の10年が経過したので、設立の時代的背景を改めて振り返ってみたい。
 親学推進の土台となったモデルは、大平政権の政策研究会報告にあった。欧米先進諸国は近代化や工業化の過程で生じた家庭基盤の衰弱や崩壊を初めとする社会病理現象を克服するために、家庭基盤の充実という共通の課題に取り組み始めた。家庭は人間社会の最も大切な基礎集団であり、家庭基盤充実の今日的課題を明らかにするためには、従来の縦割り行政や細分化された学問分野を超えた省際的・学際的共同作業が必要不可欠である。
 こうした問題意識のもとに、大平政権の政策研究会・家庭基盤充実研究グループは昭和54年3月19日に発足して以来、我が国の家庭基盤充実の在り方について討議を重ね、私が大学院留学のために渡米した昭和55年の5月29日に報告をまとめ、『大平総理の政策研究会報告書3 家庭基盤充実のための提言』(自民党公法委員会出版局)を出版した。
 同報告は学習院大学の香山健一教授と東京外大の志水速雄教授が幹事として草稿を準備し、議長である東京女子大の伊藤善市教授が調整してまとめたもので、総理大臣補佐官室が要となり、文科省幼稚園教育課長、総理府青少年対策本部参事官、大蔵省主計局主計官(厚生・労働担当)、建設省住宅政策課長、警察庁長官官房審議官などの各官庁幹部と東大の小林登教授・小堀桂一郎助教授、京大の米山俊直助教授、お茶の水女子大の原ひろ子助教授、東京学芸大学深谷和子助教授、放送作家橋田寿賀子、建築家の菊竹清訓など官民一体となった研究員で協議を重ね、文字通り省際的・学際的共同作業の成果として、大平総理が「家庭基盤充実対策本部」の本部長となる画期的な提言をまとめた。
 60年安保闘争時の全学連委員長が香山、国際部長が志水という筋金入りの学生運動の闘士コンビが、我が国の文化的特質を生かした「日本型福祉社会」「家庭基盤充実」政策重視に転換し、さらに、昭和58年には、世界を考える京都座会(松下幸之助座長)からの発言が「21世紀の理念と方策を求めて」として出版(PHP研究所)され、その主要メンバーが翌年に設置された政府の臨時教育審議会の部会長・委員・専門委員の中核メンバーになった。 

 この一文で高橋史朗氏は「親学推進議員連盟は大平政権下の『家庭基盤充実のための提言』の「家庭基盤充実対策本部」の再現を目指して結成され、『親学の教科書』作成のために60時間以議論を積み重ねた」とも書いています。「親学」の源流ともなったのが「家庭基盤充実」政策だったのです。