集団疎開のための幼児の訓練(『婦人之友』昭和19年10月号)

学童疎開昭和19年8月から開始される。対象は国民学校生徒だったが、幼児の集団疎開事例があったことも報道されている。『婦人之友』誌では幼児もまた疎開が開始される可能性があることに鑑み、自由学園の「幼児生活団」に所属する5歳から7歳までの約40名の子どものために、2泊3日で疎開準備のための「練成会」を開いた。
その集団疎開のための幼児の訓練をイラストで紹介したものが、『婦人之友昭和19年5月号の表2にカラーで掲載されている。イラストには子どもたちの「笑顔」が印象づけられているが、今から見るとなかなかフクザツな心境だ。国策の先取りを担い、合理的な「幼児疎開」を率先して研究しているわけで、このある種〈良心的な〉姿勢に泣けてくるものがある。
婦人之友』主宰の羽仁もと子による巻頭エッセイは、「今は子供を強くする秋です」であった。

 


ほかの婦人雑誌群とちがって、『婦人之友』は、最もマジメに戦争遂行に協力したという印象を持っている。学童疎開にあたっての荷物の詰め方・柳行李の整理法まで、懇切丁寧に「お母さん」たちに解説した記事などは他の雑誌には見られない。都市に住む若いお母さんたちの不安にきっちりと寄り添っているとは言えるのだけれど、だからこそその戦時協力ぶりは痛々しい。