「婦人ザッシ隣組回読についてお願ひ」

古書店で購入した『婦人倶楽部』昭和19年5月号に、こんなチラシが貼り付けてあった。
決戦下での雑誌回し読みについては、山中恒さんの『ボクラ少国民』をはじめ、当時の回顧録で多数目にすることができるが、町の本屋さんが顧客にお願いしているチラシは初めて見た。



「熊田書店」という店名が入っているが、どこの地方なのかはわからなかった。ガリ版で刷られたチラシの文面には「(主婦之友および婦人倶楽部は)苛烈なる決戦の下 突然ザッシの配本部数が今月号より特に大減冊となりました」とある。
そこで本屋さんが顧客を束ねて「ザッシ隣組」をこしらえて、「四人様に一冊づつ」販売すれば、従来の読者になんとかいきわたるだろう……という計画だったようだ。
システムは ・お一人様3日間くらい ・次の人のところまでご持参の上、お渡しください ・読んだ人は名前を書いてください ――となっていた。名前欄にはすでに3名が記入しているので、最後に回ってきた人がその雑誌を手元に置くことになったとみられる。