一升瓶でガス弾に備えよ


『主婦之友』昭和19年12月号「瓦斯空襲と家庭防護」より


この図は「代用吸収罐」というもので、ガスマスクがなくても少しの間の呼吸はしのげるように大日本帝国の科学の粋を集めて開発されたもの。
毒ガスを吸収する材料に炭を使用していますが、粉炭や「玄米を焙烙(ほうろく)でよく炒って黒焼きにしたもの」など、身近で調達できる材料で活性炭をつくってしまうところに「科学するココロ」(橋田邦彦)がうかがえます。
口でくわえるのはよいとしても、思わず鼻から空気を吸っちゃうのでは?と心配になりますが、ちゃんと「鼻つまみ」もセットで用意しておけとのありがたい指示がついていました。しかし、呼吸はよいとしても、顔面の皮膚は露出していますので毒ガスの種類によってはやはり心配は残ります。

ただ、毒ガス攻撃など、ちゃんと用心していればへっちゃらだったそうです。
この記事の冒頭には、こんな心強いメッセージが!

しかし、毒瓦斯は、あまり恐れるには当らない。瓦斯に対して全く防護にないときは、いろいろな害を蒙るが、少しでもその正体を知り、対策を心得てゐれば、爆弾、焼夷弾よりも却て防ぎ易い。瓦斯の被害は防護により、またその訓練によって、いくらでも軽減できる。『毒瓦斯恐るゝに足らず』、恐れず侮らず、確たる信念をもって防護処置に万全を期さう。
(指導)教育総監部・化兵監部 甲斐勝衛少佐  (注)強調は原文に拠る

……ということなので、この代用吸収罐をそなえておけば大丈夫。少し被曝したとしても「人体に直ちに影響が出るレベルではない」とか言われちゃいそうですね。