来日したミッキー夫妻がエノケンに誘拐され大河内伝次郎が救出

パチもんここにきわまれり! ここまでくると、和魂洋才大和魂まことにアッパレとしか言いようがありません。

別冊『太陽』こどもの昭和史、平凡社、1986年より。画像をクリックしていくと、拡大して見ることができます。

知っている人はたぶん知っている有名な「国産ミッキー」の一例であります。
来日したミッキーマウス夫妻が、「エノケン団」ならギャング団に誘拐され、それを名探偵「ノンキナトウサン」が摘発、京都の「オホカハチ」君に救援を要請します。大河内はオートバイで東海道をかけのぼり、日本刀を振り回して……という、なんつーか当時の人気もの(?)総出演の強烈なパチもんです。
ミッキーマウスをめぐって暗闘を繰り広げる日本側のキャラがエノケン大河内伝次郎というおっさん2人だ、というところに、サンリオ的ファンシー文化に毒される以前の古き良き日本がここにありますね(大嘘)――とにかく、2次元のキャラと3次元の「エノケン」「オホカハチ」が渾然一体となって紡ぎだすこの物語の世界観は、耐え難いほどにめちゃくちゃで、昨今ではなかなかお目にかかれないシロモノです。
ポストモダニズムの文脈で読み解けば、「ミッキー」というアイコンが出てきているので、いろいろと屁理屈をこねることができるかもしれませんね。

引用元には「作者、発行所共不明のいわゆる十銭本 〔昭和〕9〜10年ごろのもの」としかデータがないので、探そうに探せない大珍品です。