「遺族証明書」と「遺族番号」

昨日紹介した「招待状」に同封されて送られてきたものの一つ目。
「参列遺族案内書」。神国日本の官僚的祭政一致ぶりが濃厚に漂う1冊です。



で、この小冊子の第1頁に折り込まれているのが、下に見る「遺族証明書」なのであります。ひきつづき、個人名などはモザイクをかけています。これは拡大してじっくり見れるように、こちらにアップしておきました。甲号右下にある「遺族番号」は、6ケタの番号が押印されていて、遺族が臨時大祭に参加しているあいだは、すべてこの番号が名前代わりになったそうです。なんという官僚的神の国



臨時大祭に参加できる遺族は、上掲の小冊子によれば「一祭神に就いて二名以内」ということらしいので、「遺族証明書」も2名記入となっています。右の甲号がお母さん、左の乙号が妹=大家の婆さん。当時は香川県に住んでいたので、地元の丸亀市長が「証明」しているわけですな。
この「2名以内」の規定に、多くの遺族が真剣に悩んだ模様です。上掲「参列遺族案内書」には、

又、上京遺族決定の為、同一遺族間に感情の疎隔を来すことが仮りにあつたとしたならば、祭神の御神徳にも関しますので、住所を異にする場合には、特にお互ひの連絡を充分にしてきめて戴きます。

と、わざわざ断り書きがつけられています。では、遺族と言ってもどこまでが参列できる「遺族」なのか? 「遺族証明書」の裏面に次のような規定がありました。(カタカナをひらがなに直し、句点を補って適宜読みやすくしました)

尚参拝し得る範囲は、血縁者無き場合を除き、祭神(新合祀者)に対する妻子(庶子を含む)、相続人、父母、祖父母、兄弟姉妹、伯叔父母、従兄弟など血縁の近き者より順次に及ぼし、義兄妹弟妹にはおよばざるに付、念のため申し添え候

こう書かなければならなかったのには、いろんな理由をかこつけてどーしても行きたい人が大勢いたからなのでしょう。この規定をチョンボして参加した人もいたらしく、こんな記録が、防衛省防衛研究所に残っていました。

靖国神社臨時大祭参列者の自殺未遂事件

これは悲劇としかいいようがありません。ではなぜ、靖国神社の臨時大祭が人びとを魅了したのか、おいおい解読していきたいと思います。