決戦下の「ジェンダーフリー」バッシング


軍刀を造る婦人部隊」主婦之友 昭和18年3月号

「兵器を造る婦人部隊」主婦之友 昭和17年8月号
「機関銃を作る娘部隊」主婦之友 昭和17年10月号
「石炭増産の婦人部隊」主婦之友 昭和18年2月号
軍刀を造る婦人部隊」主婦之友 昭和18年3月号
「砲弾を充填する婦人部隊」主婦之友 昭和18年5月号
「勤労娘部隊の決戦座談会」主婦之友 昭和18年7月号

 決戦下の『主婦之友』のグラビアをかざった「婦人部隊」ルポのタイトルを並べてみると、かなりニッチな領域にも女性の労働力が動員されていたことがわかる。この「女性の戦争動員」のテーマだけで何冊も本が書けるほど資料が多いのでここでは触れないが、「大東亜戦争」の熾烈化を契機とした日本史上初めての〈女性の社会進出〉に対して、オッサンどもは今も昔も変わらぬ低水準な反発を示していた。
 『週報』昭和20年2月24日号に、つぎのような投書が載っていた。

女の立場を守れ

 最近遺憾に感じていることは女の態度が悪くなったことである。一々例を挙げるまでもなく、窓口や売子など、いたるところで見受けられる。これは急に社会に出て働くようになったため、男のような口吻や、動作をとり、全体的に粗っぽくなったのであろう。が、しかしそれでもよいものであろうか。
 たといいかに男の職場にとってかわったとしても、女子が男子化することは禁物である。前世界大戦においてドイツが敗戦の運命を担わねばならなかった原因として女子の男子化があげられているほどである。
 いかなる職場、いかなる立場にあっても、女らしいしとやかさと身嗜みとは失わぬよう心掛くべきであろう。
(東京・南畠)

 ……第一次世界大戦でドイツが敗れた原因の一つが「女子の男子化」にあったという前代未聞の珍説には、フランクフルト学派もびっくりであろう。とにかく最近の「ジェンダーフリー」バッシングな人たちと、ほとんど口ぶりが変わらないところが特徴で、八木秀次センセイの投書かと、おもわず目をこすったほどである。こうした「女子の男子化」への恐怖は、60年経っても変わることなく脈々と受け継がれている模様だ。