[皇国トンデモ備忘録] 8時間労働制はユダヤの思想侵略だった!

 戦時中、「日本天皇=宇宙天皇」という見事な怪電波を発した「生長の家」だが、谷口師にひきつづき、その弟子筋もやはりヤバ系だった。
 機関誌『生長の家昭和18年4月号に、矢野酉雄署名で「決戦下の勤皇職域訓」という、たいへん香ばしい文章が掲載されている。

ユダヤの思想侵略の弊害は全く言語に絶するものがある。『八時間働いて八時間は眠れ。八時間は遊べ』『八時間以上も働いたら過労になって病気するぞ』『八時間は眠らないと睡眠不足で健康を害するぞ』と云う常識がいつとはなしに、お互の日常生活に於ける動かすべからざる尺度となり切っている。恐るべき唯物的人間観だ。

――「恐るべき唯物的人間観」には笑った。人間は物質でできていますが、それが何か? それにしても、これがユダヤの思想侵略というのはかなりの重症電波だ。

この尺度が我らの健康を破り、増産を妨げていることは甚だしい。今こそ、この唯物的人間観を木葉微塵に粉砕して、唯神日本の人間観を、一億臣民の信仰に迄徹せしめなくてはならぬ。

 どう考えても、「健康を妨げている」ようには思えないのだが。要するに矢野某の意図は見え透いていて、8時間労働制などという屁理屈を抜かさずに、日本人なら死ぬまで働け、ということ以上を意味していない。西野がたぶんに神がかった憂国の至情から発言しているのだとしても、8時間労働制を「木葉微塵」に粉砕して誰が喜ぶのかを考えれば――あえて言おう。
「貴様は資本家の犬である!」と。

……いや、最近めちゃくちゃ残業つづきで死にそうになっており、こういうことを云う奴にはマジでアタマに来るっすよ。
 産業報国会とともに進化した「修養団」=日本的勤労イデオロギーは、戦後も松下=PHP主義や御用組合のリーダー研修、安岡正篤系「致知」グループ、さらにはイエローハットの鍵山“トイレット博士”秀三郎一派などなど、あげればきりがない人非人どもに脈々とうけつがれており、こいつらが何万人の労働者を死に追いやったのか数え切れない、と言っても過言ではないだろう(致知出版社のサイトのトップページに現れる連中の肛門的顔貌を見よ! ……あっ、TOSS向山洋一もいるじゃん)。
 最近話題の疑似科学(「水からの伝言」やらIDやら)や、「つくる会」的歴史修正主義ジェンダーフリー・バッシング、さらに靖国マンセー系言説やら何やらのゴミ言論は、こうした連中が他人に説教するために(無節操に)かき集めたネタであり・同時に彼ら自身が拠って以てたつ現代版〈日本イデオロギー〉なのではないだろうか。
 多くの心ある人びとがそれぞれのシングルイシューで闘争線を展開しているが、俺のような過重な残業と低賃金に苦しむAdobe奴隷から見ると、どうしても根っ子でつながっているように感じてしまうのである。